「……奏くん…」 夏帆の声で、目を覚ました。 あれ…俺、寝てた…? 「ずっと、手…握ってくれたの…?」 「………あぁ」 「ごめんね、迷惑かけて。奏くんいなかったら、あたし…」 「俺は何も出来なかった」 酸素マスクを付けているせいか、さっきより元気がないように見える。 「奏くんがいてくれて、すっごく安心したよ。 ありがとう」 その笑った顔。 そんな顔、誰にも見せたくない。 ありがとうを言う度に、笑顔を見せる。 その笑顔を見ると、 俺のものにしたくなる。