~その日の夜~

「ただいま~」

杏里が帰ってきた。
何事もなかったかのように。
まぁ~杏里にとっては ”ただのおしゃべり” だろうね。
僕にとっては”ただのおしゃべり”なんかじゃないんだから。
僕は素っ気なく返事をした。

「お帰り・・・。」
こんな嫉妬してる時に元気よく”お帰り!”なんて言えるか?
すると杏里が

「どうしたの何かあった?」
何かあった? 大有りだよ!
僕は思った・・・
(ひょっとして鈍感?)
そりゃそうだろうね 杏里にとっては”ただのおしゃべり”なんだから。

よし!決めた!
今日のこと言ってやろう!

「今日ほかの男と歩いてたでしょ?しかも腰に手まわされてなかった?
 嘘ついたって無駄なんだからね!」

僕は思いっきり言った。
杏里は嘘がつけないと思ったのか
こう言った。

「あれは、向こうが勝手に・・・。」

”勝手に”ねえ~。
何が勝手にだよ! 振り払うこともしなかったじゃねーか!

「しかも僕といる時より楽しそうだったし・・・。」

これでも言い訳するつもり?
僕に言い訳なんて通用しないよ
僕は彼女がなんて返してくるか内心ちょっと楽しみだっだ。

「あれは・・・」

予測的中!
僕が悲しそうなふりをすると何も言えなくなっちゃうんだ。
(可愛い~)

「ケータイ貸して」

「なんで?」

「僕以外のメアド全部消すから」

「嫌だよ。誰ともメールできないじゃん」

「何で?僕とはメールできるよ」


僕は無理矢理彼女からケータイを奪った
そして僕以外のメアドを全部消した

「なんでこんなことするの?こんなの侑人じゃない」

(これが本当の僕だよ)

僕は心の中でそうつぶやいた。