ワケあり!

 携帯電話。

 改造済みのそれは、実は二つの機能が追加搭載されていた。

 一つは、当初の目的の受信機として。

 もう一つの機能は――すぐに役に立ってくれた。

 再び訪れた、体育の日だ。

 絹は、この授業がくるのを、密かに楽しみにしていた。

 一度うまくいったことで、犯人が味をしめている可能性があったのだ。

 更衣室で視線を感じても、絹は、もう振り返らなかった。

 さっさと着替えをすませて、そこを出る。

 だが、集合先の体育館には行かず、廊下の途中で立ち止まった。

「気になる?」

 そんな絹に、委員長が声をかけてきた。

 前回の事件の時、万年筆が捨てられていたことを、一応報告していたのだ。

「ええ」

 しらばっくれてもしょうがないので、絹は素直に認めた。

「少し付き合うわ」

 ありがたいような、邪魔のような。

 まあ、委員長がいるならいるで、臨機応変に対応しよう。

 そう、絹が思った直後。

 ビィィィィーッ!

 火災報知器の警報が、廊下をつんざいた。

 周辺にいる生徒が、いっせいに動きを止める。

 違う!

 絹は、すぐに理解した。

 火災報知器じゃない!

 チーター並の素早さで、絹は――更衣室に走っていた。

 バン!

 ドアを開けると、耳が割れそうなほどの音量だ。

 床に携帯が、落ちている。

 音の原因は、それだ。

 そして。

 その側で戸惑いながら立つ、三人の女。

 音、大きすぎ!

 絹は、島村に文句を言いながら、携帯を拾い上げ、警報を切った。

 画面を見ると、案の定電源が入っている。

「委員長。そこで、待っててください」

 遅れて駆け込んできた委員長は、ちょうど出入口のところ。

 逃げ場をなくすために、そこをふさいでおいてもらった方が、都合よかった。

「ちょっとお話ししたいんだけど…よろしいかしら?」

 三人の女生徒を前に、絹はとびきりの微笑みを浮かべたのだった。