Ver.森村2


「ええ、皮膚の再生手術を自分でやって、綺麗に身体の傷を消すくらい元気よ」

 大きな大きな身体の傷を、そうしてボスは消した。

 あの日のことを、なかったことにしたかったわけではない。

 もう、いらないのだと。

 誰もが、過去の記憶から抜け出てゆく。

「……」

 あの日と、もうひとつ別の業を背負ってしまった男が、そこにはいた。

 何かを聞こうとして。

 しかし、唇を閉じてしまった男が。

「そういえば、ボスがすごい義手を作ったのよ…人の手に限りなく近い奴」

 絹は、くすっと笑いながら、話題を変えた。

 不自然な話題の転換だ。

「……」

 彼が、コメントしないことなんか、分かっている。

 だが。

 頭の中で、何かを思い描いているのだけは、痛いほどよく分かった。

 そんな絹の足元に。

 ひょこ。

 ちっちゃい子供がいた。