ワケあり!

「あ、ほんまにおった」

 昼休み。

 冬になっても、自前のスポットライトは健在のようだ。

 ゴージャス天野が、一年の教室まで訪問してくれた。

 お節介な性格なので、わざわざ心配して見にきたのか。

「ちょーっと、話したいことあるんやけど…ご飯、一緒とかあかんか?」

 おや。

 これは、意外だった。

 長期欠席していた病み上がりの絹に、何の話があると言うのか。

 ちらりと将を見る。

 一緒に、食事をする予定だったのだ。

「いっておいでよ」

 彼も、天野は安全だと思っているのか、あっさり許可が出た。

「ありがと」

 絹は、お弁当を持って立ち上がる。

 話も気になるし、天野自身も気になっていた。

 島村的意味で。

 詮索する気はないと言えば、ウソになる。

 だが、彼の存在が余りに宙ぶらりんで。

 そこが、絹の気になる――いや、心配しているところだった。

 本人にしてみれば、余計なお世話だろうが。

「入院してたんやてなぁ…名簿調べて訪ねて行ったんやけど、入院先教えてくれへんかったで。無愛想なあの人、にーちゃんか?」

 昼食の場所に案内しながら、ゴージャス天野は軽く言葉を振る。

「え?」

 しかし、それは先制のパンチに等しい。

 ノーガードの絹に、クリーンヒットだ。

「うちに…来たんですか!?」

 驚く以外にない。

「ん? なんか、あかんかった?」

 その上、島村とも会ったというのだ。

 あかんです。

 兄ではないが、兄の記憶を持つ存在である。

 妹の訪問に、島村もキモをつぶしただろう。

 そして、さぞや複雑な心境を味わったはずだ。

「ええと…私には兄弟はいません」

 微妙に表現に困りながら、絹は答えた。

「あ、そーなんや…ふーん…にーちゃん、ちゃうんか」

 絹と島村の関係に首をひねりながら、ゴージャス天野は先を歩く。

 あなたのにーちゃんだよ。

 正確さに欠ける言葉が──頭をよぎった。