ワケあり!

「やせたわね」

 教室の前。

 久しぶりの委員長にそう言われたが、そのまま言葉を返してやりたかった。

 いない間、彼女も気苦労があったのだろう。

 部長は片腕を失い、副部長は失踪。

 テニス部だけ見ても、十分スキャンダラスだった。

 部長びいきの委員長には、つらいことだろう。

 もう、三年の部活は引退しただろうが。

「高坂さんっ」

 委員長に話しかけようとした時。

 後方から、驚いた声が上がった。

 振り返ると。

 目に涙を浮かべている女生徒が、いるではないか。

 存在のかけらも忘れていた――宮野だ。

 なんで、涙目。

「よかったぁ」

 その涙を飛ばしながら、絹目がけて駆け出してくる。

 ちょっ。

 これではまるで、感動の再会ではないか。

 長く離れていた親友との。

 絹には、到底理解できない。

 どこをどう考えても、それは宮野の一方的なものなのだから。

 ただ、場所的に絹には不利だった。

 学校で、相手は女で、委員長と将に見守られているのだ。

 結果。

 絹は、両手をホールドアップする形で、胴体を宮野に奪われることとなった。

 深い深いため息をつきながら、将を見る。

 空気が読めるはずの男が、微笑んで見守っていた。

 絹が、現状に不満があるのは、一目で分かるだろうに。

「止めてよ」

 猫のはげた絹は、将にはっきり言ってみた。

 すると、なおさら微笑み。

「いやだよ。絹さんには、そういう正反対の友達も必要だからね」

 見事な拒否を、食らわされた。

 今まで、宮野が擦り寄ってくるのを一度も止めなかったのは、そんなことを考えていたのか。

「高坂さん…」

 くすっと、委員長に笑われた。

「高坂さん…ほんと元気になったみたいでよかったわ」

 はげた猫を見て、そう言われたのには──少しばかり異議があった。