ワケあり!

「ええ」

 周囲を気にせず、本当のことを言える。

「ふーん、出所したのはいつだ?」

 言いながら、男はじっと絹の顔を見る。

「…五ヵ月前よ」

 この顔から、あらぬ連想でもされているのかと思いきや。

「ハッ! たった五ヵ月でこうなんのか! そら、いいとこに売られたらしいな、ついてたじゃねぇか」

 絹は、バンバンと肩を叩かれた。

 それだけで、肩が抜けそうだ。

「最初、おまえさんがモグラ出身か、分からなかったぜ…一緒にいた、傍迷惑な太陽みたいな女のせいかもしれんが」

 歯に衣着せない物言いに、絹は笑ってしまいそうだった。

「まあ、これが終わって、おまえさんに許されるなら、向こう側の人間になっちまいな…」

 なかなか、なれる奴はいねぇんだから。

 絹は、複雑すぎて何も答えられなかった。

 なれない人間が多いというのは、よく分かる。

 向こう側は、明るすぎて不安なのだ。

 蛾の姿をしている自分が──どうしてそこで生きていけよう。