ワケあり!

「京都と言うより、ほとんど滋賀じゃねぇか!」

 派手にボヤきながら、運転手は4WDのハンドルを、オモチャのように転がす。

 彼が山道のカーブを、猛スピードのまま曲がるため、絹はドアにしがみつくのを余儀なくされたのだ。

「オッケー…あんたは、雇い主と坊やを引き取れば、後は用はないんだな」

 そんな、左右への遠心力のかかる中、他の二人は平気そうな様子で、絹の状況を把握した。

 ボスと森村。

 その二人を、無事に確保して欲しいとお願いしたのだ。

「織田は、うちのボスが始末をつけると言ったもの」

 ボスは科学者だ。

 しかも、相手はこの場合被検体。

 目的そのものを、達成するのは可能だろう。

 だが、生きて逃げるには、ボスにも駒が足りない。

 だから、絹がその駒にならなければ。

「まあ、誰が始末しようが、織田が消えれば、オレらも文句はない」

 見届けさせてもらうぜ。

 同種の過去を持つ彼らと一緒にいると、たとえようのない安心感を覚える。

 やっぱり、自分はこっち側の人間なのだと、奥底の部分で感応してしまうのだ。

「おまえさんも、あそこ出身か?」

 絹の心を見透かしたように、男に聞かれた。