ワケあり!

 増殖していく卒業生たちは、養成所だけにとどまらなかった。

 島村からの連絡で、織田の持つ非合法施設が、次々に急襲されていることを知ったのだ。

『アングラネットが、祭り状態だぞ』

 苦笑混じりの島村だったが、その声を一度ぴたりと止める。

『だからこそ、先生が心配だ…織田本家も襲撃されるかもしれない』

 そうね。

 既に、彼らの計画は予想外の増援のため、山津波のような状態だった。

 誰も、すべてを把握していないし、そして、コントロールできない。

 濁流ように、目に見える敵を押し流していくだけ。

「先生の居場所…詳しく分かる?」

 行かなきゃ。

 絹は、足を必要としていた。

 京都までの移動手段だ。

 しかし、これだけの増援の中なら、行き先さえはっきりすれば、調達できそうな気がした。

 何しろ。

 織田本家だ。

 是非、行きたい人間もいるだろう。

『発信機だけはつけてもらってるからな…すぐ位置をメールする』

 携帯を切って、絹は周囲を見回す。

 アキたちが一番頼みやすいが──連れて行く気はなかった。

 彼女とは、きっと相性の悪い世界だ。

 織田をまた、正面から見据えられては困る。

 そんな絹の視界に、最初の応援組が映った。

 増援数を見て、他へ転戦する気になったのだろうか。

 あの速さで来られたということは、一番近い人間のはず。

 西寄りのこのエリアを考えると、関西方面の地理にも、おそらく明るいだろう。

「私を、織田本家へ連れて行って欲しいの」

 そんな彼らに、絹は単刀直入に言った。

 難しい表情が、返事として返される。

「織田本家って言ってもね、知られているだけで15あるぜ…本当にそのどれかに織田がいるかも分からない」

 居場所の特定が、彼らでさえ難しいというのだ。

「それなら…分かるわ」

 絹の手の中で──携帯が激しく震えた。