ワケあり!

「いっくぜぇぇぇ!」

 武器室の位置を、完全に把握している一斉射撃。

 いや。

 いっそ、それをも巻き込んでも構わないと、本人たちは思っていたのかもしれない。

 三人だった応援が、一人、二人と増えていく。

 既に十人はいるだろう。

 総合棟も、炎上を始めた。

 卒業生たちが、ここの施設すべてをつぶしていこうとしているのだ。

 一方。

 呆然と、その光景を見ている者たちもいる。

 現在、ここで養成されていた者たちだ。

 自分の周囲の檻が壊されていくのに、それをきちんと把握できないでいる。

 絹は、最上位の男の横に立った。

「宿舎は、あなたたちの手で壊していいのよ…指揮できるならね」

 ここは、本当の彼らの巣ではない。

 心のよりどころでもない。

 そんなこと、本人たちが一番よく知っているだろうに。

「ああ…そうだな…」

 ゆっくりと、彼は動き出した。

「あ、あの女に言っとけ…お前たちの大将」

 振り返りざま、苦い響きの音。

「あんなんじゃ、いつか死ぬぞ、ってな」

 絹は──悲しくなって目を伏せた。

 アキの心配をしているのではない。

 この国は平和だが、確かにそんな危険な裏道はいくつもあるのだ。

 こうして、織田がのさばっていたように。

 確かに、アキのやり方では通用しないだろう。

 何度、力でねじ伏せても、背後から撃たれたらおしまいだ。

 だから、とりあえずここできっちりと。

 織田をつぶそう。

 それで少なくとも、脅威のひとつは消える。

 そして──ボスを迎えに行かなければ。