ワケあり!

 午前四時。

 管理棟に立てこもり、教官たちは抵抗を続ける。

 武器室があるため、こちらから大物では攻撃出来ないため、長引いているのだ。

 逆に言えば、向こうにはそれだけの装備がある。

 長期戦にして、応援待ちの姿勢だ。

 こちらが少人数なのを把握したせいもあるだろう。

 教官をあきらめさせるには、圧倒的な駒がいる。

「アキさん」

 駒を動かすには、自分では足りない気がした。

 だから、彼女を呼んだ。

「すみません、一緒に来てもらえますか」

 東の空が、薄い紫をたたえ始める中、二人は走った。

 たどりついたのは――養成員宿舎。

 絹は、携帯を出した。

「了くん、養成員宿舎のロックを解放して」

 いまもなお、寝こけているのは、鉄の心臓を持つ鈍いバカくらいだ。

 他は、外の異変に気付いているし、上位の奴らはこのドアの、すぐ向こうで待機しているはず。

 重い、重い鉄の扉。

 いまの上位は、誰だろう。

 売れやすいところだけに、入れ代わりも激しい。

 たとえ、見知った人間がいたとしても、向こうは自分を分からないのだ。

 あと、教官に取り入る少数の人間もいる。

 何にせよ。

 彼らを説得して味方につけられなければ、やはり勝利はない。

『絹さん、宿舎開けるよ!』

 了の、ゴーサイン。

 息をつく。

 さあ。

 絹が役立てる時だ。