ワケあり!

「養成員宿舎、ロック固定。外門開放固定!」

 携帯に向かって、作戦開始の指示が出される。

 幸い、真夜中。

 絹の元お仲間たちは、ほとんどが眠りの底だ。

 宿舎さえロックしてしまえば、彼らの参戦は止められる。

 実質敵は、教官のみになる。

 後の説得の心配は、ある程度のコントロールを制圧した後だ。

「行くぞっ!」

 銃砲隊三人が、先に飛び出す。

 絹が、次に続いた。

 夏の夜なのに、刺すように冷たい空気に感じる。

 自分の命を、秤に乗せている時にしか感じない冷たさだ。

 絹は赤外線スコープごしに、薄暗くうごめく先行の三人を追う。

 夜目の利かない絹に、銃砲隊が貸してくれたのだ。

 重火器担当が一人。

 後の二人は、瞬発力重視だ。

 マシンガン系がないのは、命中に自信があるのか、はたまた彼らのポリシーか。

 門に踏み込んだ三人が、一瞬で左右に散会し――伏せた。

 はっと、絹は門に身をひそめる。

 チュイン、チュインと跳弾が火花を散らした。

 不意打ちのこちらを、更に出会い頭に不意打ちしようとした奴がいたのだ。

 地雷の関係で、正門から入ってくることを見越された。

 教官に決まっている。

 とりあえず、一名が軽装備のまま侵入者を足止め。

 残りの教官が、いま武器及び養成員の準備をしようとしているはずだ。

 しかし、後者は不可能。

「遠慮なしだ! ブチこめ!」

 火線で位置を確認し応戦しながら、銃砲隊は大物をすかさず出した。

 バズーカ一閃。

 轟音と共に、総合棟が火を吹いた。

「突入!」

 間髪入れずに、全員駆け出した。

 今度は、アキたちも合流している。

 熱風が、絹の前髪を跳ね上げる。

 それさえも──冷たく感じた。