ワケあり!

「アキさん……」

 目を開けると、彼女がいた。

 部屋のベッドで、絹は横たわっている。

 ああ、そうか。

 余りの激昂で、脳の配線がショートしたかのように、絹は意識を失ってしまったのだ。

「は…あはは……」

 思い出してしまった。

 自分のしたことを。

 おかしくて、笑いが出るほどだ。

「織田の名前を…言ってしまったわ」

 アキには、少しだけ話をしたことがあった。

 でもそれは、彼女が完全なる部外者だから。

 だから、言えたことだったというのに。

「……全員、織田の名前はご存知でしたよ」

 ピシッ。

 空気に──亀裂が入った気がした。

「ぼっちゃま三人とも…知っておられました」

 絹の目を見て、アキはもう一度繰り返した。

 全員、という意味合いを間違いなく伝えてくる。

 京だけならまだしも。

 将も、そして了も!?

「奥様の生まれや死について、そこが絡んでいると…それぞれで調べられておいででした」

 了も。

 知らないままでは、いられなかったのだ。

 母の記憶もほとんどない彼さえ、桜の命の行方を追い求めていた。

 あの笑顔の陰で。

 絹に、嘘の笑顔があるように、彼らにだってあるのだ。

 爆弾を抱えていたのは、彼女だけではない。

 その導火線に。

 絹が、逆に火をつけてしまった可能性がある。

『織田』、という名前を出したせいで。

 これは──まずい。

 絹は、少しだけ冷静になった頭で目を細めた。

 三兄弟に何かあったら、彼女がボスに殺される。

「きちんと、お話されたらいかがですか?」

 アキが、前向きな提案をしてくる。

 絹は、苦笑するしかなかった。

「アキさんは、彼らに仇討ちをさせたいんですか?」

 全部、話せるわけがない。

「そう…ですか」

 アキは、目を閉じた。

「やはり…坊ちゃま方の仇なのですね、織田という人間は」

 目を──開いた。