ワケあり!

「アキさんは、ほんとすごいよ! 強いしかっこいいし! 合気道も教えてくれるし!」

 翌日の居間。

 絹の質問に、了は手放しであの女性のことをほめたたえた。

 女性をほめる形容が、入っていない気がするが。

 絹は、昨夜、部屋で考えていることがあった。

 アキと呼ばれる女性が、それに見合う人か。

 それを、確認したかった。

「いつから、ここで働いてるの?」

 この家に、若い女性の使用人がいることがおかしいわけではないが、少し違和感がある。

「ぶふっ!」

 すると。

 了が、ほとんど反射とも思える速さで吹き出した。

「あはは! それは! ぶふっ!」

 ソファの上を、転げ回って笑う。

 そんなに、変なことを聞いたのか。

「おい、了…ついにネジ、とんだか?」

 居間に入ってきた京が、弟の錯乱ぶりに驚いている。

「あはは! だって、絹さんがっ! アキさんが、いつうちに来たか、聞くんだもんっ!」

 ひゅーひゅーと、呼吸困難の息で、了が理由を話す。


「あぁ…なるほど…ぶふっ!」

 あの京が――吹いた。

 こらえきれないみたいに。

「あ、アキさんね…うちの前で、行き倒れてたのっ! や、山ごもり、帰りっ!」

 息も絶え絶えに、了が言葉を絞りだす。

 ちょっ。

 なんか、変な単語が聞こえた。

「このご時世に、山ごもりだぜ…帰りに、ここまで走ってきて力尽きたとか…ありえねぇだろ」

 京すらも笑わせる、その破壊力。

「学校を卒業したら、武者修業に行けって…どういう親だよ」

 えーと。

 つっこみどころが、満載のようだ。

 しかし、素性は怪しい。

「何年前のこと?」

 もしも、最近なら――

「もう、四年か五年くらいか?」

 セーフ。

 半端な期間が、逆に彼女の身元を保障してくれた。

 織田でも何でもなく、ただの野性の不審人物なのだ、と。