「徒歩通学って、大変だね」

 後部座席に、三人並んで座る。

 将は真ん中。

 さっきの仕返しにか、身を乗り出そうとする了を、がっちりブロックしている。

「いえ、外を歩くのは楽しいです」

 自由な外は最高だ。

 本当に、絹はそれを楽しんでいた。

 その真意までは、彼らには伝わることはない。

 彼らのイメージする絹は、過去までも美しいのだろうから。

「そうだよね、外って…あうっ!」

 同調しようとした弟は、将の肘の一撃で黙らされる。

 それに、くすっと笑おうとしたら。

「うっせーぞ、ジャリども」

 低く恫喝するような声が、車内に響く。

 絹は、びくっとした。

 この空間には、不似合いな音。

 助手席だ。

 男が、身をよじるように振り返る。

 あっ。

 絹は、すぐに気付き、そして理解した。

 この男が――

「京にぃ、絹さん恐がるから、しゃべっちゃだめ!」

 了は、恫喝にまったく物怖じしていない。

 助手席の男が、長兄の京。

 一つ上の二年生。