「あ、あとひとつ」

 指を舐めながら、絹は質問を追加する。

 ボスには、聞き辛いことがあった。

 心構えとして、聞いておきたいこと。

「なんだ?」

 絹は、一度唇をしめらせて。

 ゆっくりと、こう言った。

「あのさ…ボスと……デキてんの?」

 あの島村が――点目になっていた。

 それが、絹の気になるところだった。

 ボスはゲイだ。

 そんな彼と、いままで同居しているわけだから、可能性として捨てきれなかったのだ。

 点目が、少し色を取り戻す。

 彼は、ぼりぼりとカラスみたいな頭をかいて。

「幸い、好みじゃないそうだ」

 珍しく、苦笑いめいた表情で、島村は居間を出ていった。

 ふーん。

 やっぱりボスは、朝一途なのか。

 しかし。

 助手に入った島村が、最初にボスの趣味を聞かされた時は、さぞ複雑だったのだろう。

 そんな推測ができるさっきの声に、絹は密かに笑ってしまったのだった。