ワケあり!

「お待たせー」

 薄い真っ白のパーカーに、膝が出るくらいのハーフパンツ。足が大きく見えるバッシュに、メジャーリーグのキャップ。

 現われた了は、年相応の元気な少年のいでたちだった。

 あらら。

 小花柄のワンピースに、ボレロ風の上着(胸ポケットのある服のため)の絹とは、系列の違うファッションになってしまった。

 もう少し、了の趣味を把握しておけばよかった。

 今更着替えに戻るわけにもいかず、絹は『お姉さんと買い物に出た弟』風の組み合わせで、我慢することにしたのだ。

「多分、京兄ィのプレゼントなら、ハンズとかロフト系の方があると思うよー。服は、いろいろうるさいから」

 将と違って、弟くんは具体的に方向を決めてくれた。

 助かった。

 絹は、彼の指定に従うことにする。

「了くんは、何を買ったの?」

 車で移動中、聞いてみる。

「ラジコン~部屋の中を飛び回らせられるヘリ」

 えへへへ。

 少し子供っぽいプレゼントな気がしたが、了らしいといえばそうか。

 一応、メカっぽいところは、評価されるだろう。

「天文系から見てみよっかーいいのなかったら他の階いこー」

 到着するなり、腕を取られた。

 テンションも機嫌も、高い位置で跳ねている。

 楽しくてしょうがない感じだ。

 誘われて嬉しいのだろう。

 名指しで一人誘ったことだけで、そんなに喜んでもらえるなら、また誘いたくなる。

 甘え方を知っている子だ。

 絹さえも、釣られて笑顔が多くなってしまう。

 天文コーナーで、見知らぬものを二人でこねくりまわしてはしゃぐ。

「こっちは?」

「うーん、いまいちかなあ」

 あれこれ見ている間に、ふと、絹の目に止まったものが。

「なんで天文コーナーなのに、CDが?」

 パッケージには、惑星の写真。

 ホルスト――「組曲:惑星」

「あー、僕それ知ってる『木星』が有名だよね。ほら、『ジュピター』ってカバーされた奴、流行ったでしょ」

 流行ものは、最近シャバに戻ってきた絹には、ちと厳しい話だった。