ワケあり!

「森村さんって?」

 ゴージャス天野が立ち去って、再び二人になると将が聞いてきた。

 そういえば、彼のことは知らないんだったっけ。

「先生の親戚…何故か、あの渡部さんとよく一緒にいるんで、気になって」

 こういう時、親戚関係というのは強い。

「そうなんだ」

 将は、疑うことなくすんなり納得したのだ。

「でも祇園かあ…母さんと一回行ったなぁ。暑かったのは覚えてるよ」

 へぇ。

 将の思い出話は、興味深い。

「ちょうどアニキの誕生日だからね、宿でケーキを食べたなぁ」

 将の小ささでは、その辺が記憶の限界だろうか。

 京なら、もっと覚えているに違いない。

「お母さん、京都の人? 京さんの名前もそれっぽいし」

 さりげない質問に、将は考え込んだ。

「どうだろうなぁ…なまりはなかったと思うんだけど」

 さっきのゴージャス天野のこてこてっぷりが、頭に残ってるのだろう。

 しかし、渡部のケースもある。

 なまりだけでは、判断しづらいだろう。

 祇園祭に、なにか秘密の匂いがするが、なぜか連れていかれるという、森村くらいしか聞く相手がいなかった。

 もう一回、会ってみるかなぁ。

 絹の中に、その気持ちが芽生えたが、いくつか問題点があった。

 ボスと渡部が、それを許してくれないんじゃないかと――そう思ったのだ。