「はいはい、皆さん…帰って帰って」

 五人と絹の間に、ゴージャス姉さんが割って入る。

 そして彼女らを、虫のように散らそうとするのだ。

「ちょっと、天野さん…あなたには関係ないでしょ」

 いきなりの邪魔に、しかし、相手も怯まない。

「もー、あなたたちが顔揃えてるだけで、何の用かすぐわかるわよ。渡部臭いから、はやくどこかへ行きなさい」

 イントネーションだけ関西弁に戻った。

 しゃべりづらそうだ。

「あなた、渡部様に相手にされないからって、逆恨みはおよしなさいな」

 ほほほと高笑いで、ゴージャス姉さんこと天野を馬鹿にする美女軍団。

「あなたたちこそ、あんな頭も尻も軽い男にくっついてると、自分の価値さげますわよ」

 ふふん――ゴージャス天野も、まったく負けていなかった。

「標準語もしゃべれない、西の山猿の居場所など、この学校にはなくてよ」

 痛いところをつかれたのか、天野の頬が引きつる。

「あんたらに聞かせてやりたいわぁ、渡部の関西弁。こってこてやで」

 ついに。

 ゴージャス天野の、標準語は崩れ去った。

 さて。

 絹は、その舌戦を冷静に見ていた。

 長くなりそうだな。

 もはや、天野VS五人になっている気がする。

 絹が、ここにいる必要を感じなかった。

「あっ、絹さーん…遅いよー」

 そうしている間に、遅い彼女を了が迎えにきてしまう。

 美女軍団の険悪な空気に、まだ気付いていない。

「んー私も、ご飯食べたいんだけどねぇ」

 絹は、視線でちらりと女性陣を見た。

「え、あのお姉さんたちが、どうかしたの?」

 了が、目を丸くしながら睨み合う彼女達を、ようやく確認した。

「うん…でもまぁいっか…ご飯いこ」

 どうせ、絹など視界外の状態だ。

 彼女は、六人を置き去りに、了と昼食としゃれこんだのだった。