「あーちゃん、こないだガットの張替え手伝ってもらったよねー…これお礼」

 部室で渡すと、他の女の子に睨まれちゃうだろ?

 絹は、耳をふさぎたかった。

 なんか、こいつ――ムカつくタイプ。

「絹さん、部活いこうか」

 彼女の様子も気づかずに、将が帰り支度を済ませ立ち上がる。

 そうだ。

 さっさと、声の聞こえないところまで行けばいいのだ。

 絹も立ち上がり、教室を出て行こうとした。

 その時。

 すうっと。

 渡部と呼ばれる男の目が――絹の顔を追った。

 柔和な瞳を、呆然と見開きながら。