「お疲れさま。今から十分休憩しておいで?」



赤ペンを取り出して早速採点を始めるハル君。



「どーした?」

「ここで見ててもいい?」

「どうぞ」



何となくその場を離れたくなくて、私は座ったままハル君を眺めていた。

一体どっちが本当のハル君なんだろう。


真剣な表情で次々と採点していくハル君は、どちらかと言えばお母さんと話していた時と雰囲気が似てる。

こうして改めてマジマジと見ていると、端整な顔立ちに知的な雰囲気漂わせて、何だか大人の男性なんだって意識してくる。


彼女いるのかな。

いないわけ、ないか。

って何考えてるんだろう。

ハル君に彼女がいようがいるまいが、どうだっていいじゃん。



「本当に休憩しなくていいの?」



赤ペンをテーブルに置いてプリントの端を揃えながら、ハル君は私の顔を覗いてきた。



「う、うん。大丈夫!」



ためらいもなく近付けられた顔に、こっちがドキドキしてしまう。

いくら眼鏡越しでも、そんな間近で見つめられたら。

って、見つめてるんじゃなくて、見てるだけか。

ハル君はこれっぽっちも気にしてないようだし、何だか一人バカみたい。