「それより病院に行こうよ、ねぇ、先生」

「ヤダ」

「ヤダって……って、先生っ!!」



ふらついていた足取りが、力なく床に落ちていく。

まるでスローモーションのように倒れこんだハル君に、私は慌てて近寄った。


すごい熱……。

支えた体から伝わる熱が尋常じゃなくて、不安はさらに加速する。



「病院行かないなら、せめて大人しくベッドで寝て!」



心配からつい怒鳴ってしまった私に、ハル君は少したじろいで、思わず「はい」と返答してきた。



「病気の時ぐらい頼ってよね」



ベッドに横になったハル君に向かってポツリと漏らす。

頼りないかもしれないけれど、好きな人のこんな姿を見て構わずにはいられない。

傍にいたい……。


そんな思いに気付いたのか、



「……先生」



伸びてきたハル君の手が、ベッドの上に置いていた私の手の上に重なった。


ハル君はずるいよ。

そうしていとも簡単に、私の心まで掴んでしまう。


視線が絡まって、鼓動が早くなっていく。

ただ柔らかな笑顔を見せる、そんなハル君から目が逸らせない。


私は、咳こみながら「ありがとな」と言ってきたハル君に、胸の奥をギューッと掴まれたような感覚に陥った。