擦れた声に痰が絡まった咳はひどくつらそうで、
「なん……で、ゴホッゴホッ」
「先生っ、もう喋らなくていいから!!」
ハル君の言葉を制止して、気付けば背中を擦っていた。
「望さんがね誘ってくれたんだ。亘さんに呼び出されて、今は私一人だけど」
状況を理解したハル君は、今、ベッドから体を起こして私が作ったおかゆを食べている。
食欲もないのか少しずつ口に運ぶハル君を心配しながら、部屋の窓を開けて換気をする。
途中何度も咳こみ、その度に不安が募っていく。
大丈夫かな……。
そう思いつつも、これ以上何もできない自分がもどかしくて。
ただ、ベッドの脇に座ってその姿を見守る。
ようやく食べおわったハル君は、軽く笑顔を向けて、
「ありがとな」
お礼を言うと、ベッドから足を出して立ち上がった。
「ゴホッ……送るよ」
「えっ!? いいって、一人で帰れるし」
「そんな訳には、ゴホッゴホッ」
咳はどんどん酷くなっていき、動くのもつらそうなのに私を気遣うハル君。
私、そんなに頼りないのかな。
もっと頼ってくれていいのに。
私がもっと大人だったら、望さんみたいだったら。
「本当に大丈夫だから、ね?」
そしたら頼ってくれた?
たった五つの年の差が大きくて、早く大人になりたい、ハル君に近づきたい……と思った。


