一応ノックはしてみたけれど、返答のない部屋のドアノブに手をかける。

開くとベッドに横たわるハル君がいて、床の上に置いていたトレーを持って部屋に足を踏み入れる。


モノトーンな感じの落ち着いた部屋は、男の人にしては綺麗に片付けられていて。

ハル君らしいなって笑いを漏らした。


トレーを置いてハル君に近づく。



「先生ー、大丈夫?」



遠めに見ても、だるそうで熱そうで。

近づけばそれがさらに酷いと分かるほど、顔からは湯気が噴出しそうなぐらい真っ赤で、小さくうなされて顔をしかめていた。


慌てて冷蔵庫へと駆け寄って冷却シートを取り出し、タオルも持って再びハル君の元へと戻る。

ただ無我夢中で顔の汗を拭き、前髪を上げておでこに冷却シートを貼る。

と、ハル君に突然その腕を掴まれた。



「せ……、先生?」



思いもよらない行動に、驚いたせいか心拍数が上がっていく。

体を少し上げたハル君は潤んだ目で見つめてきて、私はその場で息を呑む。


何だか……
言葉が出てこない。

こんな状況だというのに、不謹慎にも意識してしまう。



「ゴホッゴホッ……さ、やか?」