すぐに答えは出せなかった。
未だ迷っている。
気持ちは確信したものの、それを言葉にする勇気が持てない。
黙ったままの私を見て静かに微笑んだ望さんは、再び前を見て歩き始めた。
そして……、
「ハルね、大学は向こうで卒業して、いつこっちに戻るか未定なんだって。もしかしたら戻らない可能性だって、あるかもしれない」
私の知らないハル君の将来を教えてくれた。
「向こう……って?」
「シアトルって知ってる?」
「アメリカのですか?」
コクリと頷く望さん。
つまり、ハル君は……。
「ハルのお父さんがシアトルの領事館に勤務しててね、以前から向こうの大学に来ないかって誘われていたみたいで」
ついていくのがやっとだった。
一歩一歩踏みしめながら歩いていく。
じゃないと、足をとられそうで、闇に飲まれそうで。
「一時は迷っていたみたいだけど、ハルは元々語学に興味あったから。向こうの大学で残りの単位を取得して卒業して、それから先は今後決めていくらしいんだ……」
望さんは立ち止まり、申し訳なさそうに頭を下げた。
「なのに応援するとか、気持ち伝えないのとか……軽々しく言ってごめんね。私も、つい最近教えてもらったんだ」


