空っぽの中学のメールフォルダ。
それが虚しくなって、携帯を持つ手を力なく振り下ろした。
いつも、いつも、傍にいた。
大切な、友達……ううん、親友と思っていたはず。
受験に失敗した私を気遣ってくれて、ナンパ男についていきそうになった私を心配してくれて。
颯平と付き合っているのにハル君に心が揺れ動いた私を、軽蔑もせずにその気持ちを認めてくれた。
いつだって、優美は私のことを本気で考えてくれていた。
なのに私は、自分のことばかり気にして、優美のことを考えていなかった。
もし、逆の立場だったら。
誰にだって言いたくないことの一つや二つはある。
だから、彼とのことを教えてもらえなかったこと、寂しく思ったりはするだろうけど、仕方ないかなって納得すると思う。
けど、携帯は?
まるで連絡なんか取りたくないと、遠回しに言われているようで。
「逃げているだけ……」
不意にハル君の言葉を思い出す。
そう、逃げている。
自分の気持ちからも。
自らの嫌な部分からも。
颯平と向き合うことも。
優美と向き合うことも。
臆病で弱くて、そのくせプライドが高くて……。
そんな自分を否定されるのが怖くて、拒否されることを恐れて。
逃げる私はやっぱり弱虫。


