それに、独りの時間を持てたから、気づいたことがたくさんある。


お母さんがパートに出かけると、私はようやくベッドの上から体を起こす。

誰もいなくなった家の中、リビングに向かう。

いつものようにテーブルの上に用意されている、お茶碗とお椀、お箸に湯呑み。

何もしたくないって思っていても、自然とお腹は空いてくる。

それに、作ってくれたお母さんのことを考えると、食べないという選択肢は私の中になかったんだ。



「いただきます」



誰もいないけど、習慣づいた言葉が出てくる。

こうしてご飯を食べること。

今まで当たり前のことだったけれど、こんな状況に陥って初めて、その大切さが身に染みた。



「美味しいよ、お母さん」



あの日の翌日の朝は、さすがに今より元気がなかった。

心の中はぐちゃぐちゃで、思い出すと涙が溢れそうで。

全てのことから逃げ出してしまいたかった。


それでも、朝はやってくる。

重い足取りでリビングに来た私を、温かな笑顔で迎えてくれた両親。

昨日のことを悟られまいと、平静を装い食卓につく。


さすがに食欲は湧かなかったけれど、食べないわけにはいかない。

そうして一口。