恋さえしなければ、

ハル君に出逢わなければ、

誰も傷つけずに済んだのに……。


あの一件から、私は家から出ることなく二日を過ごして、今日で三日目。

学校も一昨日のバイトも。

風邪だと嘘をついて休んで、ただひたすら家の中に籠もっていた。

そして、たくさんの人たちに心配と迷惑をかけた。


何も考えたくない。

何もしたくない。


そうは思ってみても、頭は考えることを止めてくれない。

想いは巡り巡る。



「悪いのは、私……」



まるで呪文のように繰り返す言葉に、長いようで短い時間の中で、答えを導きだそうとしていた。



「紗夜香ー、今日はどうする?」

「ごめんなさい、今日まで休む……」

「そう。じゃあ学校に連絡いれておくわ」



ズル休みだって分かっているはずなのに、何も言わないお母さん。


あの日、門限を過ぎて帰ってきた私を、服を土で汚して帰ってきた私を。

怒りもせず問い詰めることもなく、ただ「大丈夫? 何かあったの?」と聞いただけで、後はいつも通り。


それは、私にとって居心地がよかった。

私がしたことを、うまく言葉にできなかったから。

まだ、自らの非を露にできなかったから。


独りの時間が、

必要だった――……。