「少しだけでもいいから、私のこと考えてみてほしい」
颯平の制服の裾を掴んで、顔を見上げるマネージャー。
必死な想いが、ここまで伝わってくる。
それを静かに払い除けた颯平は、ゆっくりと口を開いた。
「俺、元彼のことで悩んでいても、いつも元気に明るく振る舞う瀬菜のこと凄いなって、気になってた、助けになりたいって思った。
けど、それは異性として好きなんじゃなくて、仲間としての気持ちだったんだ。ごめん、瀬菜のこと……そういう対象では考えられない。俺にとっては、彼女が一番大切で、大好きだから」
「颯平……」
胸がギュッと掴まれる。
頭を下げる颯平の姿が、目が霞んでボヤけて見えるよ……。
「もし誤解させていたのならごめんな。もう、これ以上彼女に誤解されたくないし。明日からは一緒に帰るのも止めよう」
そう言って、足音が遠ざかっていく。
「何だか颯平かっこいいね。見直した」
うん、私にはもったいないくらいの彼氏だよ。
私のいないところでこんなにもハッキリと、私への気持ちを示してくれた颯平に激しく心を揺さぶられる。
その瞬間、ハル君よりも颯平のことが好きだと感じたのは嘘じゃない。
偽りのない気持ち。
だけど、それでも、
「待ってっ!!」
マネージャーの言葉によって、結局は自覚させられてしまうんだ。


