「私……、颯平のこと好きになったの」
「えっ? ……はっ?」
昨日の言葉を思い出す。
負けないからって言った時の、マネージャーの決意に満ちた瞳。
きっと今も、変わらず真っすぐに颯平を見つめているのだろう。
それが悔しくてムカムカするんだけど、私に何か言う資格なんてない。
「お、俺を?」
やっぱり颯平は鈍感だ。
らしいなーって横で優美が苦笑する。
まったく気づいていなかったらしい颯平は、呆気にとられて間抜けな声を出していた。
それにちょっとホッとして、胸をギュッと押さえる。
「……あー、ごめん、全然気づかなかった」
「うん、知ってる。だからこれから、彼女のことだけじゃなくて、私のことも考えてもらいたいって思って」
そんなマネージャーの言葉に今にも飛び掛りそうな優美の体を押さえ、顔を見据えて首を横に振る。
何で!?って言われたけれど、私も何で制止したかは分からなくて。
ただ、この先どうなるのかを見届けたかったのかも知れない。
少しの沈黙が流れ、颯平は立ち上がった。
振り返ってマネージャーを見下ろす颯平は月明かりに照らされて、初めてその表情が私にも見えた。
顔色一つ変えることなく、真剣な眼差しでマネージャーを捉える颯平。
「ごめん。マネージャーの気持ちには応えられない」
よく言った、と横で優美がガッツポーズを作って私の肩をつついてくる。
素直に嬉しかった。
ハッキリ言ってくれたことが。
胸がくすぐったくて、だけど……その分痛みも比例した。


