「実はさ、部活の連中が近くを通ったからって突然遊びに来て……いや、断ったんだけど。そしたら紗夜香に会いたいとか言いだしたんだけど……、いい?」



申し訳なさそうな表情を浮かべる颯平に、私は笑顔で応える。


……颯平と付き合っているのに、ハル君で埋めつくされそうな心。

私の彼氏は、今、目の前にいる

“颯平”

それくらい分かるでしょ。

そう自分の心に言い聞かせる。



「あっ……。マネージャーもいるんだ……」

「マネージャーも?」



そんな私に颯平は、久しぶりに聞くその単語を発した。



「いや本当にあれからマネージャーとは何もないから! だから」

「分かってる」



颯平の顔を見据え、穏やかな物腰で言葉を遮った。

一瞬驚きの表情を浮かべたけれど、すぐに安堵の表情に変わり、顔が近づいてくる。



「颯平は嘘つくのが下手だし、嘘がつけない人だから」

「紗夜香……ありがとな」



ハニかむ笑顔は以前と何ら変わりがなくて、ただ少しだけ強引になった颯平は、そっと唇を重ねてきた。

すぐに唇は離れたけれど、不意に抱きしめられて間近で上から見下ろされる。

まっすぐなその視線が、痛々しく私に突き刺さる。



「部活の人たち待たせてるんでしょ?」