「二番目ってのはね、そんな終わり方しかないのよ」

 そう言って立ち上がり、伝票を持った。

「私が払います」

 私のこの言葉に彼女は小さく笑った。勝ち誇ったような、でもどこかで哀れむような目を向けてきた。

「あなたのおかげで、私にも悪いところがあったって教えてもらえたから、そのお礼よ。授業料みたいなものよ」

 彼女は、去った。

 私は一つの恋を失った。



 今は、夏。

 家を出たときより、傘をたたく雨の音が激しくなっている。右靴のひもがゆるんでいるのを見て、涙が流れた。

 屋根のあるバスの待合所で、雨を凌ぐ。時刻表を見ると、バスが来るまであと三十分ほどあった。

 待合所には他に、合羽を着た小さな女の子とその母親だけがいる。私は椅子に座り、ひもがゆるんでいる右靴をじっと見た。

 かすかに視界がぼやけ、涙が頬をつたう。

 女の子がしゃがんで私を覗きこんだ。私の顔を見てる。

 涙が流れていることに気付いただろう。この小さな女の子に、私の涙はどう映っているのだろう。