「愛」 -レンタル彼氏-【完結】

「別に買ってもらわなくてもいい。
愛が買いたいなら別だけど」

「…………」


愛は俺の言葉をじっくりと聞いていた。
そして、ゆっくりと。

その大きな瞳から涙を一滴、零した。


それにはこっちが驚きだ。


「は。何で泣くんだ」

「いや、泣いてなんか…。あれ、何でだろう」


愛は頬を手の甲で拭うと、自分の涙を見て戸惑っている。
だけども、涙は止まらない。


「あれ、何で?あははっ、まじウケる~」


愛は笑いながら何度も何度も涙を拭う。
だけど、次第にその顔は歪んでいく。


…そんな愛を俺は黙って、抱き寄せた。


「ち、さと、だいっ、じょう…」

「何か、わかんねえけど…泣きたかったんじゃねえの」

「………ううっ…」


そのまま腕に抱かれて涙を流す愛。

エレベーターの扉が開いたのを確認すると、俺は羽織っていたシャツを愛に被せて肩を抱いて外へと出た。
それから、人気のいないとこまで連れて行き、気の済むまで泣かせてやった。


会った初日で泣くって、何だよ。
本当に。

気の強い女かと思えば、こんなにボロボロと。