「愛」 -レンタル彼氏-【完結】

…愛ってのは何者なんだ?
見る時間あんまなかったから、資料見てねえし。


まあ、わかるのは職業とか、年齢とか。
簡単なプロフィールだけど。

それも、非公開にしてたら…俺は知る事が出来ねえ。
知ってるのは西園寺のみ。


会話をして、知れって事だろうな。



「びっくりした~?」

「え?」


愛はエレベーターに乗り込んだ後、俺を見ずにそう笑う。
何が、だろうか。


「私、お金持ちなのね。
だから、こんなとこも小さな頃から通ってたんだ」

「………」

「むしろ、庭みたいに思ってて。
じい、あ、支配人の山里ね。昔は私のお世話係。
いつの間にか支配人になってやんの」


ぺらぺらと流暢に話す愛。
笑ってはいるけど、どこか違和感を感じた。


「凄いでしょ。だから、千里も欲しいモンとかあったら言って?
買えるモンなら買うから」

「別にいらねえけど」

「えっ?」


愛は一瞬にして顔を強張らせて、俺を射抜く様に見詰めた。
その瞳は――――…怯えている様にも見える。