「愛」 -レンタル彼氏-【完結】

とにかく、準備するか。
風呂入りたいけど…そんな余裕なさそうだな。
あの調子じゃ、本当にすぐ来るだろう。

顔だけ洗おう。


顔を洗って、歯を磨いて、着替え終わった頃に電話が鳴った。

それはいくらなんでも早えだろ。
そう思ったけど…案の定、相手は愛だった。


「はい」

「着いたー」

「…わかった」


俺は財布と携帯だけ持つと、部屋を出てエレベーターに乗り込んだ。
それから、マンションの外に出る。

目の前に見えるのは真っ赤なフェラーリ。
それにまず、目を見張った。

更に出て来た女に目を見張る。


ぴたっとした体のラインが出るワンピース。
その上にドルマンのボレロ。
髪の毛はゆるゆるに巻いていて、顔には大きなサングラス。
すらっと伸びた足元には、ピンヒール。


“いかにも”金持ちって感じだった。


「千里ー?」

「ああ」

「わ、まじ?カッコいいじゃん」


愛はサングラスを外すと、ニヤっと笑いながら俺の事を見る。
愛の元へと近付くと、

「乗って」

そう言って愛は運転席に戻った。

言われた通りに乗り込む。