「………」


黙ってそれを見つめる。


「お手に取ってみますか?」

すかさず、店員が俺にそう声をかけた。
30代半ばぐらいの優男の店員。


「……いや」

俺は言葉を濁すが、既に店員はショウケースを開けてそのネックレスを取りだしていた。
少し溜息をつきながら、俺はそのネックレスを手に取った。


「それはアクアマリンって名前で…」

「…アクアマリン」

「幸せな結婚や、喧嘩をした相手と仲直りをしたりと、縁をもたらしてくれるパワーストーンになってます。
他にも効果は色々あるんですけどね」

「へえ…」




その後も色々俺に買わせようと、自分の知識を披露する店員を軽く受け流しながら俺はそのネックレスを見た。
綺麗な、淡いブルー。

透明で、透き通っていて。

………やめた。


何考えてんだろ、俺。


あの女にぴったりだなんて。


あの女とは…あのピアスの所持者ではなくて。
過去、俺を愛してくれた女。

そして、俺に愛を教えてくれようとした女。
…だけど、俺を最後に裏切った女。