「わかった、なんか飲み物適当に用意しておく」

「よろしく」

「じゃあ、頑張ってねえ」


聖はひらひらと手を振ると、自分の部屋へと向かう。
俺はそのまま、エレベーターで寮の外へと出た。


仕事で外に出ようとしたところで聖に捕まったんだ。
外には迎車と記載されたタクシーが待っている。

それに俺は乗り込むと、駅前とだけ告げて背もたれにもたれかかった。


レンタル彼氏で働いてから、一ヶ月が経つ。
それは思ってた以上にあっという間で。


正直言えば、悲しむ暇なんかなかった。


感情が消えてしまったかの如く、俺はただ女と会って淡々と相手をした。


笑う事も、話す事も、生きていることすら、うまく出来ているのかわからない。


おふくろのいなくなった事が、果たして悲しいのかどうかもわからない。
憎いとも思う。
色々な想いが重なって、いつも無になる。

そして、決まって最後には自分を責めていた。