「愛」 -レンタル彼氏-【完結】

「千里、これ買う?」

「いらねえ」

「これは?」

「いらねえ」

「これ…」

「いらねえって。つか、さっきから何でお菓子ばっかなんだ」

「ええ、女の子だもん」

「意味わかんねえ。飯買いに来たんだ」

「…じゃあ一つだけいい?」


上目遣いで軽く首を傾げて言う愛海。
どっかのキャバ嬢かよ。


「………買うなら好きにしろ」

「うん、買う!」


お菓子コーナーを物色する愛海を放って、俺は軽く溜息をつく。
ずっと、愛海はこんなテンションなんだろう。
それを考えただけで自然と溜息がもう一度出た。


「溜息は幸せ逃がしちゃうんだよ?」


いつの間にか、隣にいた愛海が俺を見上げると窺うように言う。

幸せ…、ずっと掴んでおけるなら。
溜息なんて二度と吐かねえ。
だけど、そうじゃないだろ。


それにもしもそうならば。
俺に幸せなど残らないんだろう。生涯。