「愛」 -レンタル彼氏-【完結】

「俺、悪いけど本当に好きとかわかんねえから。
あれこれ努力すんな。しても無駄なだけだ」

「……」


俺の言葉に俯く愛海。
自分の髪の毛を手でくしゃっとする。


「男と女の間に友情なんてないと俺は思ってる。
現に俺と愛海はそういう関係だしな。
でも、特定の人物を恋人として見る事が俺にとったら何よりも難しい。
一緒にいたりする事に何も言わねえ。
だけど、きっと俺は愛海を傷付ける事を平気で言う。
それに、他の女も抱く。誰かだけって事が出来ねえ。
それが今の“俺”なんだ」


そう。
これがレンタル彼氏をしていた俺。


……長城千里なんだ。


信用できるものは金と自分のみ。
働いてもいないし、毎晩の様に不特定多数の女を抱いてる。

腐りきってる男なんだ。


だから、誰かに愛情を貰う価値すらない。


俺は母親にすら売られたのだから。


愛海の体は小刻みに震えている。
泣いているのだろうか。


「……言いたい事はそれだけ?」


小さく、低く。
俯いたまま、愛海は話す。
聞き取って理解するのに少し時間がいった。


「千里!」


顔を上げた愛海は――――……笑っていた。