「愛」 -レンタル彼氏-【完結】

「…これ、愛海の？」

「………そう」


受け取ってから、愛海はポカンとしている。
ピアスから、俺に視線を向けると更に不思議そうな顔をした。


「あのさ…俺、別に嫌いとかはない。
だけど、連絡するとかあるじゃん。
急に家に来たりすんのは辞めろっつーの。
まあ、愛海が大嫌いって言ってもらいたいなら別だけど」


俺の言葉にぷるぷると愛海は首を振る。
それから、くしゃっと顔を歪ませると涙をぽろっと零した。


「あー、泣くなよ。そっちのがめんどくせえ」

「ごめ、ん。だって、嫌われてなくて、嬉し、くって」

「別に好きにならねえからって、嫌いになんねえよ」

「うー、千里～。好きー」

「…はいはい」


愛海は泣きそうになるのを必死に堪えながら、俺に抱き着いてくる。
その背中をぽんぽんと叩く。


「ごめ、すぐ、泣き止む」

「泣いておけ、泣ける時に」

「…え？」

「泣いちまったんだから、我慢すんな。泣け」

「何、それ、も、う…ふ、うう」


俺の腕に収まった愛海は俯くと、ぼろぼろ涙を零していた。
何度も何度も顔を拭っても、溢れる涙を止められないようだ。