「愛」 -レンタル彼氏-【完結】

「迷惑…つーか。ここ、俺ん家。勝手に上がるな。
彼女でもねーだろ」

「………ご、ごめん」

「俺に何を求めているのか、わからない。
だけど、愛情を求めているなら無理だ」


その言葉に、女は酷く傷付いた顔をした。
部屋に流れる静寂。

俯き、女は微かに震えていた。
…まさか、泣いてないだろうな。
めんどくせえ。

俺は訝しげな顔で、その場に座る。


「……違う」

「あ？」


震えていたけど、強い言葉。
違う、って何が？


キッと、女は顔を上げる。


「愛情なんか、求めてない！
私を抱く時、千里は一度も私の名前を呼ばなかった。
だから、愛情なんてないのわかってる。
…わかってて…一緒にいたいんだ」

「………」

「嫌いになりたい。だけど、なれない。
嫌いだって、迷惑なら…嫌いだってはっきり言って。
そしたら、もう寄り付かない」

「………」


俺は再度、溜息をつく。
それから、立ち上がるとアクセサリーを入れていた箱からピアスを取りだす。

それを女に差し出した。