「愛」 -レンタル彼氏-【完結】

開けた俺を見て、「こんばんは」と言うと佐々木は顔色を変える事も無く部屋の中に入ってくる。


「千里さん。説明したいのでいいですか?」

「……ああ。俺も聞きたい事が山ほどある」

「では、どうぞ、そちらに」


さっき、西園寺がいた部屋と同じぐらいの大きさのソファ。
ここは同じマンションなのだろうか。

一度、部屋を見渡すと白と黒を基調にされた殺風景な、何もない部屋だった。
俺がソファに浅く腰かけたのを確認してから、佐々木はソファに座ることなくテーブルの端にしゃがみ込む。


「えー、マニュアル資料ベッド脇にあったと思うんですが読みましたか?」

「マニュアル?」

「はい、レンタル彼氏のマニュアルです」

「………つか、俺の携帯は?」

「それも、ベッド脇にあったと思います」

「ちょっと、それ取ってきていい?」

「はい、大丈夫です」


俺は立ち上がると、寝室に向かう。
その間も佐々木は資料を色々広げている。

……なあ、俺やるだなんて一言も言ってねえんだけど。