もう何度もポケットをパンパンと叩いている。
後ろも、前も。
シャツのポケットですら。


だけど、何も入っていない。


……取られたのか?
詐欺?
そんな事するように思えなかったんだけど。


てか、もししたのならする相手間違えているだろ。


ぐるぐると、今日起こった出来事が頭の中を駆け巡る。
西園寺から仕事の誘いを受けたんだよな、俺。
で、今日説明を聞く為に来て…。

レンタル彼氏がどうの、寮がどうのって…。
で、そうだ。
俺達はガタイいい男に意識失わされたんだ。

…それから?

あれ。それからわかんねえ。
そうやって、頭を抱え込みながら考えていると。


ピンポーンと、インターホンの音がした。


…は。誰?



俺は恐る恐る玄関まで向かうと、覗き穴に顔を近付けた。
その先にいたのは、…佐々木だ。


気付いてないと思ったのか、佐々木は再度インターホンを押す。
俺ははあっと安堵の息を漏らすと、ドアノブを捻った。