「愛」 -レンタル彼氏-【完結】

絶対、あれこれ聞かれるだろうと思ってたけど、意外にも愛は何も聞いて来なかった。
拍子抜けしながら、いつもの様に他愛ない話をする愛を見る。


「でさ、そこのケーキなんだけどさ」

「……」


部屋に到着してからもずっとこんな感じ。
まあ、聞かれたかったわけでもないからいいんだけど。


「愛」

「ん?」


なあに?って顔で、俺に視線を向ける。


「明日も病院行ってくるわ」

「うん、わかった」


俺の真面目な言い方に、愛も笑みを消して頷いた。


「車出してあげる」

「忙しいだろ、愛。タクシーで行くからいい」

「いいよ。少しぐらい。送るしか出来ないけど」

「…ありがとな」

「うん、当たり前じゃん。千里らしくない」

「何が」

「結構しっかりしてると思ったのに」


愛は俺の髪の毛に手を差しこむと、感触を楽しむように優しく撫でる。


「病名とか、医者に言われても結構覚えてそうじゃん」

「……」


髪の毛に差し込んでいた手を、頬につけると

「だから、千里がその大家さん大切に思ってんのかなーって思った」

そう言いながら、更に反対の手も俺の頬へと添えた。