「愛」 -レンタル彼氏-【完結】

「ええ、なのでもうご帰宅頂いて大丈夫ですよ」

「…白井さんは大丈夫なんですか?」

「検査結果が出ないと、何とも言えません」


まあ、それもそうか。
少しでもいいから話したかったが、それもこの調子じゃ叶いそうにない。

また、明日来るか。

白井さんから連絡したい人とかいたら聞いてやらないと。
身内でないと、こうも態度が違うんだな。

医師や、看護婦に軽く頭を下げてから俺は病院を後にした。


夜風が当たると少し寒い。
タクシーを待ちながら、俺はぼーっと空を見上げた。


一過性…何て言った?
あの医者。

入院って言葉に気を取られて、肝心な事覚えてねえ。


思ってた以上に動揺してたんだな、俺。


髪の毛をくしゃっと掻き上げる。
その時に、やっと俺の携帯が震えてる事に気付いた。

あ。
電源つけっぱだった。

ほとんど稼働しない携帯だったから、存在自体忘れてた。

ポケットから取り出して、携帯を開く。
相手は確認する必要もない。愛だ。


通話ボタンを押すと、耳に携帯をつける。