俺がそう言ったのを聞いて、愛は目を真ん丸にした。
それから、タバコの煙を吐き出して
「何、言ってるの。
愛を欲しがってるのは、千里じゃない。
いつだって、愛が欲しかったのは千里じゃない。
どこまでも愛を欲して、焦がれていたのは、千里よ。
屈折した愛情でも、手放したくなかったのは…千里の方」
愛は俺に眉を下げて言った。
俺が、愛を欲しがって…いた?
愛の言ってる言葉の意味がよくわからない。
そんな俺の様子を見てから、苦笑すると愛はタバコを灰皿へと押し当てた。
それから、俺の隣へと移動する。
ぴったりとくっついた後、俺の手を取り自分の手を絡ませた。
「…千里は、私に好きって感情はなかったと思う。
けど、いつだって“愛”に飢えてた。
理由はわかんない。
冷めた目をして、でも、私を抱いてる時はいつだって寂しい目をしてた。
そんな千里が堪らなくて、私だけを必要としてる様に思えて…」
一度、言葉を切ると愛は上目遣いで俺を見る。
「だから、私は千里から離れられなかった」
そう、言いながらゆっくりと顔を近づけて唇を重ねた。



