「いなくなったんじゃなかったのか」

「……いる」

「え?」

「ここにいる」

「………」


茫然としてると、伊織はくくっと笑い出した。
まるで幽霊でも見てるかのような気分だ。


「何だよ、聖も千里も。
俺がいちゃおかしい?
俺はここで働いてるのに」


じゃあ、既に聖と伊織は会ってるのか。
いつ。
いつ、戻ってきた?


このレンタル彼氏の交友関係じゃ気付かなくても仕方ないだろうけど。


「二か月ほど、客について海外行ってたんだよ。
帰ってからの客も泊まりっぱなしで、ほとんど寮に戻る事なかった」

「…連絡もつかないほどか?」

「海外じゃ連絡取りようないだろ?」

「聖、心配してたぞ?」

「ああ、根掘り葉掘り聞かれたよ」


あははって擦れた笑い声を出す伊織が酷く不気味に思える。