「さい…ってい!!!」


バシンと、頬を叩かれた後。
ドタドタとうるさく俺の部屋を後にするその人を俺は無言で見つめた。


………はあ。
疲れた。


「……あんたも帰れば」

「…うん」

そう言って、その女も洋服を身に纏うとベッド脇にあったバッグを手にした。
それから、玄関へ向かおうとする。


俺はと言うと、さっきと変わらずその場から動いてない。


彼女は玄関の前まで行くと、くるっと振り返った。


「千里…明日、また来る」

「は?」

「私、別に一番を望んでいるわけじゃないから」

「………好きにすれば」

「うんっ」


満面の笑みを見せた後、彼女は扉を開けて去って行った。


そして、俺はやっと息をつく。
…どっと疲れが押し寄せて来た。


「…彼女だなんて一言も言ってねえのに」

さっき、叩かれた頬を一度撫でる。
腫れたらどーすんだ。