「愛」 -レンタル彼氏-【完結】

「ねえ、あんた。こっち座れば」

「え」


深々と座っていた体を持ち上げると、そいつは俺を手招きする。


「立ってるとか、疲れんじゃん。俺の隣空いてるし。
あ、俺吏紀ね」

「…………」


じゃあ、向かいの知的そうな男が誠か。


「どうも」


好意を有難く受け取っておくか。
そう思い、俺は吏紀の隣に座った。


「千里ってーの?」

「ああ、そう」

「どういう字書くの?」

「数字の千に里」

「ふーん。俺ね、歴史の史に一を付けたして~、紀は糸へんに己」

「へえ」

歴史の史に一を付け足すってなんだ。


「そっちのちょー可愛い顔した奴は聖っつーの。
聖なるとか、なんとかの漢字」

「………」


ちらっとその聖と呼ばれたアイドルみたいな顔をした男を見る。
聖はにこっと笑うと、よろしくと言った。


「…よろしく」

「さっきからさー誠にも話しかけてるのに、誠そっけないのー」


吏紀はテンション高くそう言うが、誠は全く吏紀の方を見ようともしない。
小説なのかわからないが、文庫本をずっと読んでいる。