「愛」 -レンタル彼氏-【完結】

そんな俺は家に行こうと、準備をした。
自転車で通い慣れたくるみの家まで向かう。

胸は相変わらず、ざわざわしていた。
変な不安がずっとまとわりついている。


鼓動が落ち着かないまま、俺はくるみの部屋の前で一度息を吸った。


それから、インターホンを押す。
だけど、暫く待っても沈黙。

不思議に思った俺は再度、押した。
また、沈黙。

何度も何度も押すけど、誰も出て来ない。


くるみは家にいない?
今日は休みのはずだ。

…急な仕事とかだろうか。


あまり、そう言った事は聞かないのだけどもしかしたら。
それに万が一って事もある。


顔をしかめながら、俺はどうしようかと玄関の前で立ち往生していた。


そこに

「君」

そう、声がかかった。


その声がした方を向くと、50は越えているだろうおじさんが俺の方へと歩いて来ていた。


「宝田さんの知り合い?」

怪訝そうな顔で俺に声をかけると、おじさんは俺の目の前で立ち止まる。
それから眉間に皺を寄せたまま話し出す。


「彼氏とかかね。
困ってたんだよ、遺族が引き取りに来ないし…。
助かっ…」

「遺族!?」

俺はおじさんの言葉を遮ると、両肩をがしっと掴んだ。
それに目を真ん丸にして俺を見るおじさん。